夏の怪現象

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梅雨も明けて暑い夏がやってこようとしている。
そんな暑い日にちょっと気味の悪いお話をしよう。
4、5日前のことなのだが、いつもの様にバイトから帰った私はいつもの様に玄関で鍵を開けようとしていた。
そこまでは日常と何一つ変わり映えのしない光景なのだが、私の目にあるものが飛び込んできた。
見てみると、玄関のドアノブに何かが入ったビニール袋がぶら下がっていた。
一体何なのだろうか・・・・。
そして中身を見てみた。
そこには・・・・。
「カラムーチョ」
が、入っていた。
「カラムーチョ」だけが・・・・。
他には何もない。
「カラムーチョ」だけがコンビニの袋に入って私の玄関のドアノブにぶら下っていた。
さすがに気味が悪かった。
何の意味があって「カラムーチョ」だけなのだろう?
今更試供品??
にしてはせめてチラシも同封されているはずだ。
さすがにその日は気味が悪くてぶら下ったままほったらかしにしていた。
次の日も「カラムーチョ」のぶら下ったドアノブを開ける。
その次の日も・・・・。
そして昨日も同じく放っておいたのだが、早朝の4時ごろになって無性に小腹がすいたのだ。
冷蔵庫の中身はほぼ空っぽ。
コンビニにお菓子でも買いに行こうとドアを開けた時にふと「カラムーチョ」が目に入ってきた。
「ど、どうしよう・・・・。」
なんてタイミングで「カラムーチョ」を見てしまったのだろうか。
私は苦悩した。どう考えても怪しい・・・・。だがお腹はすいている。
理性と本能の葛藤すること10分程、結局私は食欲という人間の三大欲求に勝てることは出来ずに「カラムーチョ」を部屋へと持ち帰った。
念のために袋全体を見渡して小さな穴が開いてないか調べてみたが、特に不自然な形跡は見当たらなかった。
恐る恐る袋を開けた。
すると中からはごく普通の「カラムーチョ」の香りが漂う。
もうこうなったら食べてみるしかない。
だが、もしものためにすぐ「119番」出来るように携帯を近くに置いた。
もうここまで来れば後戻りは出来ない。
2,3片を手に取り、覚悟を決めて口へと頬張った。
味は普通の「カラムーチョ」だ。
そして慎重に噛んで飲み込んでしまった。
もう本当に後戻りは効かない。
飲み込んだ瞬間、私は色んなことを考えていた。
「だ、大丈夫やろ・・・・?」
「いや、これでもし毒で死んだら相当かっこ悪いやん!?」
「こんな古典的な罠に引っかかるなんて・・・・。」
「あぁ・・・・。せめてアリコの保険にでも入っておけば・・・・。」
「どうしよう、元気なうちに遺書でも書いておこうか・・。」
一口目を飲み込んで数分が経った。どうやら私は無事のようだ。
「生きてる?アリコ仮面は呼ばなくていい?」
まだ私の頭はやや錯乱していたが、ようやく落ち着きを取り戻した。
どうやらアリコ仮面の出番はなさそうだ。
一安心して調子に乗った私はあっと言う間にぺロリと平らげてしまった。
と、一夜あけた今日になってこんな文章を書いてるところを見ると全然平気なようだ。
いやはや、よく考えるとかなり無駄な冒険だった気がする。


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