第3回HCDの理解in名古屋に参加しました。

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2011年6月11日(土) モンキーワークス株式会社主催

HCDの理解第3回に参加しました。

 

1回目はHCD全体の流れを一通り流してやって、2回目は参加できずで今回から4回、5回と3回連続で掘り下げて行います。

今回は「ユーザー評価」について。

 

▼講師紹介/浅野 智 先生

○ブログ: 情報デザイン研究室http://asanoken.jugem.jp/
○履歴:
多摩美術大学 美術学部 卒業
多摩美術大学 大学院修士課程 美術研究科 修了
多摩美術大学  勤務
学校法人岩崎学園 勤務
○学位:修士(芸術学)
○教育分野:情報デザイン・基礎デザイン
○主な活動学会:日本デザイン学会・ヒューマンインターフェース学会・人間中心設計推進機構評議委員・情報デザインフォーラム
○研究分野:情報デザイン教育・ユーザインタフェース・ユーザビリティテスト

HCD告知用サイトより

ますはおさらい。HCD(人間中心設計)のプロセス。

  • ユーザー調査
    フィールドワーク
    オブザベーション
    インタビュー
  • ユーザー評価(今回はココ
    インスペクション評価
    ユーザーテスト
    長期観察
  • ユーザー情報の視覚化
    カードソート
    ペルソナ/シナリオ法
  • 情報のモデル化
    プロトタイピング
    アクティングアウト

このプロセスを繰り返してゆきます。
今回のユーザー評価は、問題点を具体化することでサイトリニューアルなどに適しています。

 

ユーザー評価の手法は4つ

  1. エキスパートレビュー
  2. 認知的ウォークスルー
  3. ユーザビリティテスト
  4. 長期的観察

1.エキスパートレビュー(ヒューリスティック評価)

ユーザビリティの専門家(3名以上)に依頼して、ガイドラインに基づき自身の経験や知識で評価を行う。

ニールセンの10項目(ユーザビリティガイドラインは読んだほうがいい)

2.認知的ウォークスルー

検査者自身がユーザーの認知的な行動軌跡を推定して問題点を抽出する方法。
ユーザーが自分の目的を達成するためにどのような行動をとり、その結果予測しなかったエラーをどのような場合犯すのかを想像して進める。

※ウォークスルーとは、日本語で言うところの「立ち稽古」の意味で、みんなで仕様書を見ながらブレストすることを意味します。

手順としては、

  1. 対象となるユーザーがどのようなスキルかを設定する。
    →ペルソナを作ってユーザー像を具体化する。
  2. ゴールとそれに向かうタスクを設定。
    →シナリオ法を用い、ペルソナが取るであろう行動パターンを具体的に決める。
  3. タスクごとに評価ポイントごとに問題点や懸念事項を認知科学的なガイドラインに沿って列記していく。

 

3.ユーザビリティテスト

エキスパートユーザー(対象サイトを何度も訪問していて、慣れているユーザー)と、ノービスユーザー(初めて対称サイトを訪れるユーザー)ごとに、作業タスクを設定して、各タスクの到達時間と発話を記録して比較、解析する。

NE比を解析して、 問題となるタスクを注目する。(この時の発話にヒントが隠されている)

4.長期観察

その日限りのユーザーテストではなく、長期スパンでノービスユーザーを観察する。 
(例)iPhoneなどで、最初は使い方が分からずに、不評でも、長期的に観察することで使い方を覚えたユーザーがiPhoneを好きになっていく様子を観察するなど。

 

ユーザーテストのワークショップ

さて、いよいよワークショップが始まりました。

まずは、課題として前日に教えてもらったサイトをじっくり閲覧して、ページ構成や内容などを把握しておく。

ユーザーテストを行うにあたって、作業タスク(アクティビティ)と答えとなる操作(インタラクション)を設定します。
実は、このアクティビティとインタラクションの設定がとても大切で、かつとても難しいポイントなのです。

出来るだけ具体的なタスクを用意して、被験者が困らないように設定しないといけません。

結局うちの班もここで見事に躓きました(汗)

 

課題:某駅前のショッピングモールのサイト

Phase1.作業タスクを設定する。

作業タスクを作るにあたってこれまでのHCDの経験を活かし、まずはターゲットを決めるためのペルソナを作りました。

22歳の女性「明日香」さん。彼女は近くの美術館に友達と2人で行くことになりました。

美術館に行った後にショッピングモールに行こうと思っています。

ペルソナを元に作った作業タスクはこのようになりました。

アクティビティ

・6月25日(土)にモールで開かれているイベントをチェックする
・2人でディナーが食べられるヘルシーなお店を探す
・ディナーの前にショッピングが出来るお店を探す

インタラクション

・トップページにアクセス
・グローバルナビゲーションの「イベント」をクリックしてイベント一覧にアクセス
・カレンダーから6月25日をクリック
・ショップをクリック
・グルメをクリック
・「豆花」という店名をクリック
・スクロールして気になる雑貨やを見る

 

Phase2.ユーザビリティテスト

作成したアクティビティとインタラクションを元に、まずは班のメンバーが最初にパイロットテストを行います。

ここで、作業タスクの流れや次にやる本番に備えてのリハーサルを行います。

次に「エキスパートテスト」として、班のメンバーでサイトを把握している人がテストを行い、操作を動画キャプチャしていきます。

今回使用した動画キャプチャソフト:(windows) CamStudio http://nonn-et-twk.net/twk/CamStudio/

Mac Snow Leopardは最初から機能としてついてるそうです。

 

※ユーザーテストの注意点としては、

・最初に作業タスクを声に出して読んでもらう
・モデレータ(隣で補助する人)は常に発話を促す(熱中すると無口になるため)
・被験者の質問には答えない(これでいい?とかここをクリックするの?とか)→「自分で考えてください」と答える
・最後に「終了しました」と言ってもらってテスト終了
・テスト終了後に感想をインタビューする。(ココ大事)

エキスパートテストを保存した後は、他の班からノービスユーザー(初見のユーザー)に協力してもらい、ノービステストを行います。

こうして、エキスパートユーザー1人とノービスユーザー2人のデータを保存します。

ユーザーの途中での発話(ひとり言)もしっかり録音していきます。

 

Phase3.書き起こし

得られたデータから、各インタラクションまでの経過時間と発話を表にまとめてグラフ化していきます。

ちなみに、東京では今回の内容は2日かけてやるそうで、とにかく時間との戦い。しかも慣れないMACのKeynoteとNumberというオフィスソフトの操作方法に苦しみながら必死でデータを作っていきます。

 

Phase4.NE比解析

 

エキスパートテストの値とノービステスト2名の平均値をグラフ化して、NE比の解析を行います。

エキスパートとノービスの時間差が3倍くらいの所は大して問題にはしません。3倍の差であればノービスユーザが慣れれば縮まる範囲だからだそうです。

逆に10倍以上の差は、根本的な見直しが求められるため、場合によっては次回リニューアルに持ち越したり予算や日数などと相談する規模、または、そもそも作業タスクが適切だったのかを考えないといけないレベルです。

5~6倍のあたりは少し直す程度なので、まずはこのあたりを潰していきます。

 

ここで、初回のオブザベーションで行ったカードソートを使った課題解決法で問題点を洗い出して改善案を検討していきます。

 

Phase5.発表・講評

改善点やレポートをまとめて最後に発表しました。

 

問題点としては、

  • イベントの情報を見た後の導線がなく、次にどこに進んでいいのか分かりづらい
  • グローバルナビに「ショップ」としかなく、グルメ情報にたどり着きにくい
  • グローバルナビに採用情報やスタッフブログは必要?
  • ショップページのカテゴライズが甘く、欲しい情報が載っていない
  • 店舗ごとの情報も写真がなく、イメージしづらい

このあたりを改善していくような内容のプレゼンを行いました。

 

【感想】

まず、タスクの設定で「ヘルシーなお店を探す」というのが失敗でした。主観に左右されてしまうため、人によってヘルシーの定義が異なり、中にはこの中にヘルシーなお店はない!と言われる被験者もいて、
もっと具体的に「2人で食べれる和食創作居酒屋を探す」とか「オーガニックフードを提供するお店を探す」とかにすればよかったです。

ユーザーの動きは、こちらの意図する通りにはならない。というのも実感しました。まったく関係ないページに移動したり、そこで迷子になったりと、「見たら分かるだろう」というのはこちら側の傲慢なんだと身にしみました。

ワイヤーを作る時は、ここをクリックして、その後このページを見てこのバナーをクリックして、お問い合わせページに移動して・・・・

と言った導線を考えてそれに向かった設計をしますが、実際に初めて訪れるユーザーが意図しない動きを見るとショックを受けることでしょう。
そこで、頑固に「何でそこいっちゃうんだよ~!そこ見ろよ~!」ってならずに、頭を柔らかく、イケてないものはイケてない!とちゃんと受け止める素直な姿勢が必要ですね。

単にアクセス解析とにらめっこして、ここで離脱するから~とかここはアクセス数が多いから~とかのデータだけではなく、リアルで起きている情報って大事だなと感じたワークショップでした。

 

次回はペルソナ・シナリオ法。楽しみです。


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